2024/05/17

中小企業がCAD/CAMを導入するメリット及び選定方法

中小企業が3DのCAD/CAMソフトウェアを導入する際には、大きなコストと労力が求められます。しかし、近年の技術の進化により、これらのソフトウェアの選定と導入は、より簡単かつ効果的になりました。

本記事では、CAD/CAMを導入するメリットと、導入時のポイント、そして現在主流のソフトウェアやサポート情報までを分かりやすく解説します。

CAD/CAM中小企業への導入メリット

CAD/CAMの基本と中小企業への導入メリット

近年、製造業においてCAD/CAMシステムの導入が急速に進んでいます。特に、中小企業にとってCAD/CAM導入は、限られた経営資源を有効活用し、競争力を強化するための有効な手段となります。

ここでは、中小企業におけるCAD/CAM導入メリットを、生産性の向上、コスト削減、品質向上、競争力強化、その他のメリットの観点から統合的に解説します。

1. 生産性の飛躍的な向上

設計・製造準備の効率化 

CADを導入することで、設計者はコンピュータ上で設計を行い、修正や変更を容易に行うことができます。設計変更に要する時間を大幅に短縮できるため、設計部門の作業効率が飛躍的に向上します。

また、CAMは設計データに基づいてNCプログラムを自動生成します。これにより、製造準備にかかる時間を大幅に短縮し、製造部門の負荷軽減にも貢献します。

自動化による人材不足への対応と従業員のスキルアップ

 CAD/CAMシステムの導入により、これまで人が手作業で行っていた設計や製造準備、加工の工程を自動化できます。これにより、製造業が抱える人材不足の問題を解決できるだけでなく、従業員はより専門的で付加価値の高い仕事に集中できるようになります。

例えば、従業員は高度なCAD/CAM操作の習得や、自動化システムの運用管理、品質管理、工程改善などの業務に携わることができるようになり、個々のスキルアップと、企業全体の技術力向上に繋がります。

2. コスト削減の実現

材料の無駄を削減 

CAD/CAMシステムによる高精度な設計と加工は、材料の無駄を最小限に抑えることにつながります。特に、高価な材料を使用する場合には、大きなコスト削減効果が期待できます。

試作品製作コストの削減 

CADを用いた3Dモデリングやシミュレーションによって、製品の完成形を事前に確認することができます。そのため、試作品を製作する回数を減らすことができ、試作品製作にかかるコストを大幅に削減することができます。

人件費の削減 

自動化による省人化は、人件費の削減に直接的に貢献します。また、人材不足の解消は、新たな人材の採用・教育コストを抑える効果もあります。

3. 品質の向上

高精度な加工と品質の安定化

 CAMシステムは、設計データに基づいて工作機械を制御し、高精度な加工を実現します。従来の手作業による加工では避けられなかったバラツキや誤差を最小限に抑えることが可能となり、製品の品質が安定化します。

その結果、手作業によるバラツキや不良品の発生を抑制し、高品質な製品を効率的に生産することが可能となります。

4. 競争力の強化

高品質な製品の提供

 CAD/CAMシステムの導入は、高精度な加工と品質の安定化を実現し、顧客の要求に応える高品質な製品を安定供給することを可能にします。

短納期化への対応

 設計・製造準備の効率化や情報共有による連携強化によって、製品開発のリードタイムを短縮し、短納期化の要求にも応えることができるようになります。

多品種少量生産への対応 

CAD/CAMシステムの柔軟性の高さは、多品種少量生産にも対応しやすくなります。これは、顧客のニーズが多様化する現代において、大きな強みとなります。

設計の柔軟性の向上 

CADツールを使用することで、デザインの修正や変更が容易になり、柔軟な対応が可能になります。市場のニーズを素早く製品開発に反映することができます。

5. その他のメリット

データ管理の改善 

設計データがデジタル化されることで、データの管理や共有が容易になり、プロジェクト全体の可視性が向上します。設計変更履歴の管理や、過去の設計データの活用も容易になり、設計部門全体の効率化に繋がります。

社内コミュニケーションの活性化 

CAD/CAMシステムを導入することで、設計部門と製造部門の情報共有が円滑になり、コミュニケーションが活性化します。これは、ミスや手戻りを減らし、より良い製品開発に繋がるというメリットもあります。

中小企業にとって、CAD/CAMシステムの導入は、初期費用や運用コストなどの負担が伴う決断となります。しかし、生産性向上、コスト削減、競争力強化といったメリットを総合的に判断すれば、中長期的な視点で大きな投資対効果が期待できます。

CAD・CAMの概要

CAD・CAMの概要

CAD/CAMは、コンピュータを使って製品の設計・開発から製造までを行うための技術です。

CAD(Computer-Aided Design)

CADは、設計者が製品のデザインをコンピュータ上で作成、修正、分析、または最適化するための技術です。これにより、手作業による図面の作成が不要となり、設計プロセスが大幅に効率化されます。

機能とメリット

  • 設計の効率化: CADソフトウェアを使用することで、設計プロセスが迅速化され、設計変更も容易になります。
  • 高精度: CADシステムは高精度な図面を作成できるため、誤差の少ない製品設計が可能です。
  • 3Dモデリング: 製品の3Dモデルを視覚化でき、デザインの確認やシミュレーションが可能です。
  • データ管理: 設計データをデジタルで管理することで、チーム間での共有やコラボレーションが容易になります。

CAM(Computer-Aided Manufacturing)

CAMは、CADで作成された設計をもとに、実際の製造プロセスをサポートする技術です。これには、NC(数値制御)工作機械のプログラミングや、製品の加工工程の最適化が含まれます。

機能とメリット

  • 自動化: CAMソフトウェアを用いることで、製造プロセスの多くが自動化され、生産効率が向上します。
  • 精密加工: コンピュータ制御により、高精度な加工が可能です。
  • 迅速な製造: 設計から製造への移行がスムーズになり、製品開発のスピードが向上します。
  • コスト削減: 無駄のない加工プロセスを設計することで、材料費や労働コストを削減できます。

CAD・CAMは製造業における競争力を高め、革新的な製品開発を支援する不可欠なツールとなっています。

CAD/CAMにおける2Dと3Dの違い

CAD/CAMには2Dと3Dのモードがあり、それぞれに特徴と利点があります。

2D CAD/CAMの利点と特徴

  • 簡便性と速度: 2Dは、平面図やレイアウト図を迅速に作成できるため、簡単な設計や初期段階のプロジェクトに適しています。
  • コスト: 2D CADは、3Dに比べてソフトウェアやハードウェアの要求が低いため、コストが抑えられることが多いです。
  • 標準化: 建築や製造業の多くの分野では、2D図面が標準として広く使用されています。

3D CAD/CAMの利点と特徴

  • リアルなイメージ: 3Dモデルは立体的な視覚化が可能で、製品の全体像や内部構造を詳細に表現できます。
  • 設計精度: 3Dは、設計の精度を高めるだけでなく、製品の動作や機能をシミュレーションすることで、設計ミスを事前に発見しやすくなります。
  • シミュレーション機能: 3Dモデリングでは、実際の製造前に設計のテストやシミュレーションが可能で、リスクを低減できます。

使い分けのポイント

シンプルな設計や低コストが求められる場合には2D CADが適しています。

複雑な設計や精度が求められる場合、または製造プロセスと統合する必要がある場合には3D CADが適しています。

状況に応じて2D CADと3D CADを使い分けることで、設計作業の効率と精度をさらに高めることができます。

中小企業に最適なCAD/CAMソフトウェアを選ぶ時のポイント

中小企業に最適なCAD/CAMソフトウェアを選ぶ時のポイント

CAD/CAMソフトウェアを選ぶ際にはいくつかの重要なポイントがあります。

ここでは、中小企業がCAD/CAMソフトウェアを導入する時に必ずチェックして欲しいポイントについて解説しています。

コストパフォーマンスを重視した選定方法

中小企業にとって、「少ない投資で大きな成果を上げる」ことは、成長の鍵となります。コスト面に関して、以下のポイントを踏まえて、慎重にソフトウェアを選定していきましょう。

  • 価格と年間保守費用の確認: ソフトウェアの初期費用だけでなく、年間保守費用も検討しましょう。
  • ライセンス形態の確認: ライセンスの種類や利用料金について詳細に調査し、自社のニーズに合ったプランを選びます。
  • 試用版・デモ版の活用: 試用版やデモ版を使用して、実際の使用感を確かめてから最終決定を行いましょう。

業務ニーズとの適合性

CAD/CAMソフトウェアを選定する際には、ソフトが自社の業務ニーズとどれだけ適合しているかを慎重に検討する必要があります。業界特有の要件やプロセスに対応した機能を持つソフトウェアを選ぶことが重要です。

機能の充実性

ソフトウェア選定の際は、必要な機能がすべて揃っているか確認することが重要です。

特に、3Dモデリング、シミュレーション、CAM(Computer-Aided Manufacturing)機能などが含まれているかをチェックすることで、設計から製造までのプロセスを効率的に進めることができます。

※3Dモデリングとは、コンピュータを使って三次元の物体やシーンをデジタルで作成するプロセスです。これにより、現実世界の物体やキャラクターをデジタル空間で再現することができます。

ソフトの操作性

ソフトウェアの操作がどれだけ簡単か、また、従業員がどれだけ迅速に使いこなせるかを考えることは重要なポイントです。操作性を評価するポイントとして、以下を抑えておきましょう。

  • ユーザーインターフェースの直感性
  • カスタマイズ性
  • マニュアルやサポートの充実
  • 他ユーザーからのフィードバックやレビュー

サポートとアップデート

ベンダーのサポート体制や、ソフトウェアの定期的なアップデートが提供されるかどうかも重要な要素です。

サポート体制: ベンダーが提供するサポートの質や対応の速さは非常に重要です。トラブルシューティングや技術的な質問に対するサポートが充実しているかを確認しましょう。

定期的なアップデート: ソフトウェアが定期的にアップデートされ、新機能の追加やバグ修正が行われるかどうかも重要です。これにより、ソフトウェアが常に最新の技術に対応し、セキュリティや互換性の問題を最小限に抑えることができます。

これらのポイントを総合的に検討して、最適なCAD/CAMソフトを選定してみてください。

主流のCAD/CAMソフトウェアをランキング形式で紹介!

主流のCAD/CAMソフトウェアをランキング形式で紹介!

CAD/CAMソフトウェアはさまざまな業界で使われており、それぞれに特徴と性能の違いがあります。

こちらでは、現在人気の高い機械用CAD/CAMソフトをランキング形式でご紹介します。

CADソフトウェアのシェアランキング

1位: AutoCAD

AutoCADは、特に建築やエンジニアリング分野で広く使用されている業界標準のCADソフトウェアです。2Dおよび3D設計における強力なツールであり、幅広い用途に対応できる汎用性が評価されています​。

2位: SolidWorks

SolidWorksは、主に機械工学や製品設計、シミュレーションで高い評価を受けているCADソフトです。3Dモデリングに特化し、製造業やエンジニアリング分野での使用が多く、精密な設計が求められる場面で広く採用されています​。

3位: Fusion 360

Fusion 360は、クラウドベースのCAD/CAM/CAEソフトウェアで、製品設計や3Dプリントに特化しています。リアルタイムのコラボレーション機能や幅広いツールセットを備え、特に中小企業やスタートアップに人気があります​。

4位: Siemens NX

Siemens NXは、工業デザインや製造業において強力な機能を提供するCADソフトウェアです。高度なシミュレーションツールや製造プロセスの統合が可能で、航空宇宙や自動車産業などで広く使用されています​。

5位: TinkerCAD

TinkerCADは、初心者向けのエントリーレベルのCADソフトウェアとして広く認識されています。教育用途や簡単な3Dモデリングに最適で、特に子供や初心者が3D設計を学ぶための入門ツールとして評価されています​。

※このランキングは、ソフトウェアの用途やユーザー層に基づいて調整されています。各ソフトウェアは異なるニーズに対応しており、目的に応じた最適な選択が求められます。

CAMソフトウェアのシェアランキング

1位: Mastercam

Mastercamは、その多彩な機能と高い信頼性から、精密加工が求められる分野で多く利用されています。ユーザーの使いやすさを重視した設計であり、特にCNCプログラミングにおいて業界標準とされています。また、その長い歴史と幅広いサポート体制も評価されています。

2位: Fusion 360

Fusion 360は、CADとCAMの両機能を統合したソフトウェアで、設計から製造までを一貫して行える点が特徴です。特にクラウドベースでのコラボレーション機能が優れており、小規模から中規模のプロジェクトに適しています。製造プロセスのシミュレーションや最適化が可能で、効率的な製造をサポートします。

3位: SolidCAM

SolidCAMは、SolidWorksとの連携が強く、CADデータを直接利用できる点が大きな強みです。これにより、設計変更や加工の効率化が図られます。特に、複雑な形状の加工に対応するための機能が豊富であり、高いコストパフォーマンスが評価されています。

※このランキングは、最新の市場分析や製品レビューに基づいており、特定の業界や用途に応じて評価されています。

中小企業で3D CAD/CAMの導入が進んでいない理由

中小企業で3D CAD/CAMの導入が進んでいない理由

多くの製造業において、3D CAD/CAMは設計・製造プロセスを革新し、高品質な製品を効率的に生み出すために不可欠なツールとなっています。しかしながら、中小企業においては、2D CADが依然として主流であり、3D CAD/CAMの導入は進んでいないのが現状です。

その理由として、主に以下の3つのハードルが存在します。

コストと導入の負担

  • 3D CAD/CAMソフトウェアは高価な場合が多く、導入費用に加えて、保守費用やバージョンアップ費用も必要となります。
  • 高性能なハードウェアも必要となり、初期投資が大きな負担となります。
  • 既存の業務フローやシステムを変更する必要があり、そのための時間やコストも考慮しなければなりません。

スキル習得の時間と人材不足

  • 3D CAD/CAMの操作には専門知識や技術が必要であり、既存の従業員へのトレーニングが不可欠です。
  • 習熟するまでに時間を要し、その間は生産性低下も懸念されます。
  • 専門性の高い人材の確保が難しく、採用コストや教育コストも大きな負担となります。

費用対効果への不安

  • 3D CAD/CAM導入による具体的なメリットが見えにくく、投資に見合うだけの効果が得られるか不安視されることがあります。
  • 短期的な視点では、コスト増となる可能性が高く、長期的な視点での費用対効果を理解することが重要です。

中小企業にとって、これらのハードルは決して低くありません。しかしながら、3D CAD/CAM導入によるメリットは、多岐に渡り長期的な視点に立てば、企業の競争力強化に大きく貢献する可能性を秘めています。

CAD/CAMの導入を支援するサービスとサポート

CAD/CAMの導入を支援するサービスとサポート

CAD/CAMを初めて導入する企業にとっては、適切なソフトウェアの選定や操作方法の習得、導入資金といったことが大きな課題となることがあります。

ここでは、CAD/CAM導入や導入後に受けられる支援サービスやサポートについて詳しく紹介します。

CAD/CAM導入支援とは?

CAD/CAM導入支援とは、企業が設計・製造プロセスを効率化するためにCAD/CAMシステムを導入する際に、専門的な知識や技術を持った外部の企業やコンサルタントがサポートを提供することです。

具体的には、以下のような支援内容が考えられます。

  • ニーズ分析とコンサルティング: 現状の業務プロセスを分析し、最適なソリューションを提案します。
  • システムの選定と導入: 企業のニーズに最適なCAD/CAMソフトウェアやハードウェアの選定を助け、実際の導入までサポートします。
  • トレーニングと教育: 社員が新しいシステムを使いこなせるように、トレーニングプログラムを提供します。
  • カスタマイズと開発: 特定のニーズに応じて、システムのカスタマイズや追加機能の開発を行います。
  • 技術サポートとメンテナンス: 導入後のシステムが円滑に稼働し続けるよう、技術的なサポートや定期的なメンテナンスを提供します。

主な支援提供先

CAD/CAM導入支援を提供している企業・団体は以下の通りです。

  • CAD/CAMベンダー: 各CAD/CAMシステムを開発・販売している企業。導入支援やトレーニングを提供していることが多いです。
  • ITコンサルタント: 企業のIT戦略全般を支援するコンサルティングファーム。CAD/CAM導入に関するコンサルティングや導入支援サービスを提供している場合があります。
  • システムインテグレーター: 企業の業務システムの設計・開発・導入・保守などを請け負う企業。CAD/CAMシステムの導入やカスタマイズを支援します。
  • CAD/CAMスクール: CAD/CAM操作の教育機関。企業向けにカスタマイズした研修や導入支援を提供している場合があります。
  • 中小企業支援団体: 各地の商工会議所や中小企業支援センターなど。CAD/CAM導入に関する補助金制度の紹介や相談に応じています。

中小企業庁による導入支援

中小企業庁や関連機関(SMRJ日本政策金融公庫など)は、CAD/CAMの導入を支援するための補助金や融資制度を提供しています。

たとえば、「ものづくり補助金」や「事業再構築補助金」は、設備投資や新技術の導入を目的とした中小企業にとって、初期導入コストを抑えるための重要な支援策です。

また、日本政策金融公庫は、長期・固定金利の融資を通じて、資金調達のサポートを行っています​。

さらに、専門家による無料の相談サービスや、技術導入に関する助言を提供するプログラムも利用可能です。これにより、企業は適切な導入計画を立てやすくなり、経済的な負担を軽減しながら最新の技術を導入できるようになります。

まとめ

中小企業にとって、CAD/CAMのシステムの導入はコストや人材育成など、確かに乗り越えるべきハードルは存在します。しかし、長期的な視点で見れば、生産性向上やコスト削減など、多くのメリットをもたらし、企業の競争力強化に大きく貢献する可能性を秘めています。

最適なCAD/CAMシステムを検討・選定・導入する際に、こちらの記事が参考になれば幸いです。

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