2024/07/23

専門家が教える!転造ねじの下径設定のポイント 下径の一覧表 加工事例もあり

金属の世界に潜む微かな差が最終製品の質を左右する。精密な転造ねじ製造において、下径設定は至高の技とされる。なぜそれが重要なのか、そしてどのようにして最適な下径を見極めるのか、そのポイントを専門家の視点から紐解いていこう。 最後に実践で使える転造の下径の一覧と日興精機での加工事例もあります 

1. 転造ねじ製造の基礎知識

ねじは、機械要素として非常に重要な役割を担っていますが、その製造方法の一つが転造ねじ製造です。転造とは、素材を加工することなく、プレスや圧力をかけて形状を成形する技術のことを言い、ねじの場合は、特殊なローラーを使って圧力をかけることで、ねじ山を形成していきます。この方法で製造されたねじは、切削ねじと比較しても、材料の繊維流れがそのまま残るため、強度が高く、寿命が長いという特徴があります。さらに、切削屑が出ないため環境にも優しく、生産性が高くなります。しかし、その精度や品質を担保するためには、転造ねじの下径設定が重要な要素となるのです。

1.1. ねじ加工概要と転造ねじの機能

さまざまなねじ加工方法の中でも、転造ねじの製造はその独特な加工技術から特別な位置を占めています。ねじ加工はおもに、内ねじと外ねじに分けられ、それぞれに適した方法が用いられます。転造ねじの場合、外ねじの製造において主流となっており、その主な機能は、部品の固定や調節を行うことにあります。材料の塑性変形を利用したこの加工法は、摩耗しにくく、さびにくいねじを生産するという大きなメリットがあります。また、転造ねじは、高い疲労強度を有しており、動的な荷重がかかる環境でも優れた性能を発揮します。そのため、自動車業界や航空機の産業など、安全性が極めて重要とされる分野でよく使用されているのです。

1.2. 転造工具とその役割

転造工具は、転造ねじ製造において不可欠です。この工具は、特殊な形状をしたローラーで構成されており、材料に圧力をかけながら回転することで、ねじ山を形成する役割を担っています。転造工具には、ねじの微細な形状を精密に加工するための高い精度が求められます。また、高い圧力がかかる加工工程のため、工具の寿命や摩耗への耐性も重要なポイントとなります。摩損した工具を使用すると、ねじの寸法や形状に影響が出てしまうことから、適切な管理と定期的な交換が、高品質な転造ねじを維持する上で非常に重要なのです。

1.3. 下径とその重要性

下径とは、ねじの山を形成する前の棒材の直径のことであり、転造ねじを製造する際には、この下径を正確に設定することが極めて重要です。下径が不適切であると、ねじの山が形成された際の外径が規格外になる可能性があり、その結果、ねじの締結強度や精度に影響を及ぼしてしまいます。また、下径が大きすぎると、材料に無理な力がかかり、ローラーの損傷や、製品の割れといったトラブルを引き起こす原因となることもあります。したがって、材料の種類、ねじのサイズ、使用するローラーの仕様などを考慮し、精緻に下径を設定することが、転造ねじ製造における品質を保つ鍵なのです。

2. 転造ねじの下径設定の重要性

強度や精度において、転造ねじの下径設定は非常に肝要な点となります。適切な下径を設定することで、ねじ山の形成がうまくいき、仕上がりの品質を高めることができるのです。この設定を誤ると、ねじ山が不完全になり、寸法精度を損ねることにもなりかねません。したがって、製造現場では、このステップに細心の注意を払う必要があります。正しい知識を持って下径設定を行うことが、高品質な転造ねじを製造するうえでの重要な鍵なのです。

2.1. 強度と精度を左右する下径

下径は、ねじの芯となる部分であり、この直径が小さいとねじ山が脆弱になり、結果として製品の強度に影響を及ぼしてします。逆に、下径が大きすぎるとねじ山が適切に形成されず、精度が落ちることになります。したがって、下径の設定は非常に緻密な計算と経験が求められます。具体的には材質や使用条件、または求められる性能など、多様な要因を考慮して決定されるべきです。プロとしての深い知見と技術が、製品の品質を確保する基盤となるのです。

2.2. 転造ねじのトラブルを防ぐ下径の設定

下径の選定は、製造中に起こりうるトラブルを未然に防ぐ上でも重要となります。例えば、下径が不適切な場合、ねじ加工時に材料に過剰な負荷がかかり、ねじ山の割れや工具の破損を招くことがあります。これらのトラブルは、生産効率を低下させ、コストの増大をもたらします。適正な下径設定は、こうした問題を回避し、滑らかな製造プロセスを保持するためには欠かせない要素といえるでしょう。

2.3. 下径設定の際の一般的な誤解

下径設定にまつわる一般的な誤解は、しばしば品質の低下や効率悪化を招く原因となります。例えば、「より強くすれば良い」という考え方で、無闇に下径を大きくすることは、ねじ山の不完全な形成を招きます。また、「小さければ精度が向上する」という認識も誤りで、適切なサイズを見誤るとねじの耐久力が損なわれます。転造ねじの製造においては、経験則だけでなく科学的なデータに基づいた精緻な設定が求められるからです。正しい知識をもって慎重に設定を行うことが重要なポイントとなるのです。

転造下径表

下記は日興精機で転造前に切削や研磨の下径に使用している表です もし加工時お困りの場合は使用いただけたらと思います

ねじ転造下径表
メートル並目ねじ
ねじサイズ ピッチ下径(H/6)
M2×0.41.67-1.70
M2.2×0.451.83-1.87
M2.3×0.41.97-2.00
M2.5×0.452.13-2.17
M2.6×0.452.23-2.26
M3×0.52.60-2.63
M3.5×0.63.03-3.06
M4×0.73.45-3.49
M4.5×0.753.92-3.96
M5×0.84.38-4.43
M5.5×0.94.81-4.86
M6×1.05.25-5.30
M7×1.06.25-6.30
M8×1.257.07-7.12
M9×1.258.07-8.12
M10×1.58.91-8.97
M11×1.59.91-9.97
M12×1.7510.73-10.78
M14×2.012.56-12.63
M16×2.014.56-14.63
M18×2.516.23-16.31
M20×2.518.23-18.31
M22×2.520.23-20.31
M24×3.021.90-21.98
M27×3.024.89-24.98
M30×3.527.56-27.66
M33×3.530.56-30.65
M36×4.033.23-33.33
メートル細目ねじ
ねじサイズ ピッチ下径(H/6)
M3×0.352.68-2.72
M4×0.53.57-3.61
M4.5×0.54.07-4.11
M5×0.54.57-4.61
M5×0.754.41-4.45
M5.5×0.55.07-5.11
M6×0.55.57-5.61
M6×0.755.41-5.45
M7×0.756.41-6.45
M8×1.07.24-7.29
M8×0.757.40-7.45
M9×0.758.40-8.45
M9×1.08.24-8.29
M10×0.759.40-9.45
M10×1.09.23-9.28
M10×1.259.07-9.12
M11×0.7510.40-10.45
M11×1.010.23-10.29
M12×1.011.21-11.27
M12×1.2511.06-11.12
M12×1.510.89-10.95
M14×1.013.21-13.27
M14×1.2513.07-13.12
M14×1.512.89-12.95
M15×1.014.21-14.27
M15×1.513.89-13.95
M16×1.015.21-15.27
M16×1.514.89-14.95
M17×1.016.22-16.28
M17×1.515.89-15.96
M18×1.017.20-17.26
M18×1.516.86-16.93
M18×2.016.54-16.62
M20×1.019.20-19.26
M20×1.518.85-18.92
M20×2.018.54-18.62
M22×1.021.20-21.26
M22×1.520.85-20.92
M22×2.020.53-20.61
M24×1.023.20-23.26
M24×1.522.85-22.92
M24×2.022.52-22.60
M25×1.024.20-24.26
M25×1.523.85-23.93
M25×2.023.52-23.60
M26×1.524.85-24.93
M27×1.026.22-26.28
M27×1.525.85-25.93
M27×2.025.53-25.62
M28×1.027.20-27.26
M28×1.526.85-26.93
M28×2.026.52-26.60
M30×1.528.85-28.93
M30×2.028.52-28.60
M30×3.027.87-27.97
M32×1.530.85-30.93
M32×2.030.51-30.59
M33×1.531.85-31.93
M33×2.031.53-31.62
M33×3.030.87-30.97
M35×1.533.85-33.93
M36×1.534.85-34.93

日興精機 加工事例

弊社で切削と研磨で下径を整えてから転造している製品です ポイントは転造の前に研磨をすることでより品質高くしていることです もし切削でネジを切っていて ネジの相手物の寿命が短いなどのお悩みの場合は一度転造も検討してみてはいかがでしょうか?

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