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2024/08/12

切削油の種類を徹底解説!特徴・用途・選び方のポイント

金属を削る切削加工の現場で欠かせないのが切削油です。工具と素材の間に介在し、摩擦を軽減しながら加工精度を高める大切な役割を担います。

一口に切削油といっても、その種類は多種多様です。冷却性・潤滑性・防錆性など、求められる性能によって適した種類は異なり、誤った選定は、加工不良や工具摩耗の原因になることもあります。

本記事では、切削油の種類とそれぞれの特徴、選び方のポイントまでをわかりやすく解説します。

切削油とは?主な4つの役割

切削油とは、金属を削る・穴をあけるといった加工時に使用される加工用の液体潤滑剤です。主に、工具とワーク(素材)との摩擦や熱をコントロールするために使われます。

切削加工では、回転・摩擦・切り込みといった動作によって、工具や素材が高温になったり、摩耗が進んだりするリスクがあります。切削油を使用することで、これらのトラブルを抑え、加工品質を安定させることが可能になります。

切削油の主な役割は以下の4つです。

冷却

切削時に発生する熱を冷ますことで、工具の温度上昇を抑えます。

例えば、マシニングセンタなどの高速回転による加工では、一瞬で刃先が高温になることがありますが、冷却性の高い切削油を使うことで、工具の寿命が延び、ワークの熱変形も防げます。

潤滑

刃物と金属の接触面に油膜をつくることで、摩擦抵抗を下げます。

その結果、加工がスムーズになり、仕上がり面がキレイになります。また、潤滑性が高い切削油を使えば、工具の欠けや焼き付きも防止できます。

洗浄

加工中に発生する切りくず(金属の削りカス)や粉塵を洗い流し、工具やワークに付着しないようにします。

これにより、刃の摩耗を防ぎ、加工面を常にクリアに保てます。特に複雑な加工や微細な穴あけなどでは、洗浄性能が大切になります。

防錆

切削後の金属表面は、熱や水分で酸化しやすく、サビの原因になります。防錆効果のある切削油を使うことで、加工後の部品の品質を長期間維持できます。

これらの機能は、切削油の「種類」によってバランスが大きく異なります。
たとえば、潤滑性を重視した油性タイプ、冷却性に優れた水溶性タイプなど、それぞれ得意分野があります。

もし用途に合わない切削油を使ってしまうと、

  • 工具が早く摩耗する
  • 加工面にバリや焼き付きが出る
  • 材料にサビが発生する

といった不具合やコスト増につながる可能性があります。

だからこそ、加工内容に合った切削油の種類を選ぶことが、高精度・高効率な加工を実現するうえで大切になるのです。

切削油の種類とそれぞれの特徴

切削油は、大きく分けて「油性」と「水溶性」の2種類があります。どちらも加工時のトラブル防止や効率化に役立ちますが、それぞれ得意分野が異なります。

以下の表は、代表的な切削油の種類を比較したものです。加工内容や素材、作業環境に合わせた選定の参考にしてください。

切削油の種類比較表

切削油の種類 主な特徴 冷却性 潤滑性 適した加工 主な注意点
油性切削油 潤滑性に優れ、重切削に強い ネジ切り、タップ、低速加工 ミスト発生、引火性に注意
水溶性(乳化型) 水と油のバランス型、白濁する 汎用的な金属加工 腐敗しやすく管理が必要
合成型 化学合成、水に完全に溶ける △〜○ アルミ・非鉄金属、高速加工 潤滑性はやや劣る場合がある
セミ合成型 油分と合成成分の中間的存在 マシニングセンタなど 製品ごとの性質の違いに注意
環境対応型 バイオ成分・低刺激設計 ○〜◎ ○〜◎ 健康配慮・環境配慮が必要な現場 費用がやや高い傾向

水溶性切削油

水溶性切削油は、水をベースにしたタイプで、冷却性に優れているのが特徴です。

潤滑性を補うために油分や化学成分を加えることで、幅広い加工に対応できます。特に熱の発生が大きい高速加工において威力を発揮するため、多くの現場で使われています。

乳化型(水と油の混合タイプ)

  • 油と水を混ぜて使うタイプで、白濁した見た目が特徴的
  • 冷却性と潤滑性のバランスが良く、万能型として汎用的に使える
  • ただし、切削くずや異物が混ざりやすく、液の劣化管理には注意が必要

合成型・セミ合成型(水+化学成分)

  • 合成界面活性剤などの化学成分で構成され、透明な液体
  • 油分が少なく、腐敗しにくく衛生的
  • 環境への負荷が少ないことから、近年では主流になりつつあるタイプ

主な特徴

  • 高速加工でも熱がこもりにくく、加工精度を安定して保てる
  • 廃液処理が比較的しやすく、作業環境にもやさしい
  • 潤滑性は油性にやや劣るものの、適切な条件下で十分な効果を発揮

向いている加工

  • アルミニウムや非鉄金属など、熱変形しやすい素材の加工
  • マシニングセンタやNC旋盤を用いた連続加工や自動運転
  • 高速・高回転での大量加工にもおすすめ

水溶性切削油は、「冷却を最優先したい」「環境や衛生面にも配慮したい」という現場にとってバランスの取れた選択肢です。

使用前に濃度管理や腐敗対策などの基本管理をしっかり行えば、長く安定して活用できる優秀な切削油といえるでしょう。

合成型切削油

合成型切削油は、鉱物油を一切使わず、化学合成成分で構成された水溶性切削油です。

透明でサラサラした見た目が特徴で、腐敗しにくく衛生的な性質を持ち、排水処理がしやすいのも大きなメリットです。

主な特徴

  • 高い冷却性能により、高速・高回転の加工でも熱を効率よく抑える
  • 油分を含まないため、作業環境のベタつきが少なく清潔
  • ミストや臭いが少なく、作業者への負担が軽減

向いている加工

  • アルミニウム・真鍮・銅など非鉄金属の加工
  • マシニングセンタや自動化ラインでの連続加工
  • 清潔さや環境基準が求められる製品の製造現場

使用時の注意点

  • 油性タイプに比べると潤滑性能はやや劣るため、負荷の高い加工には不向きな場合も
  • 金属との相性や工具の素材によっては、性能を十分に発揮できないことがあるため事前のテストが推奨されます

セミ合成型切削油

セミ合成型切削油は、鉱物油と合成成分の両方をバランスよく配合したハイブリッドタイプです。

潤滑性と冷却性のバランスが良く、幅広い加工に対応できるのが特徴です。

主な特徴

  • 油性と合成型の中間的な性質で、幅広い条件に柔軟に対応可能
  • 水溶性のため冷却性が高く、ミストや臭いも比較的少なめ
  • 一般的な工作機械との相性も良く、導入しやすい汎用タイプ

向いている加工

  • 多品種少量生産など、加工内容が日々変化する現場
  • 鉄・アルミ・ステンレスなど、さまざまな素材への対応が必要な環境
  • 工具寿命とコストのバランスを視したいケース

使用時の注意点

  • 製品によって配合比率が異なるため、使用感や性能に差が出る場合がある
  • 水質や濃度管理によっては乳化不良や腐敗のリスクもあるため、定期的なメンテナンスが必要

環境対応型切削油

環境への配慮が求められる現在、環境対応型の切削油が注目を集めています。

これは従来の切削油よりも、作業者の健康や自然環境への負荷を大幅に軽減するよう開発された製品群です。

主な特徴

  • バイオマス(植物由来)成分を含み、生分解性が高い
  • 化学添加物や鉱物油を極力使用せず、ミストや刺激臭が少ない
  • 作業者の肌荒れ・呼吸器トラブルといった健康リスクを軽減

向いている加工

  • 医療・食品・精密機器など、清潔さや安全性が重視される分野
  • 環境ISOやCSR方針に基づくサステナブルな製造を目指す企業
  • クリーンルーム対応や省エネ・省資源を推進する加工現場

使用時の注意点

  • 一般の切削油に比べると価格がやや高め
  • 加工条件や素材との相性に注意が必要で、一部用途では潤滑性が不足するケースも
  • 保管時に直射日光や高温多湿を避けるなど、劣化防止の管理が求められる

このように、それぞれの切削油は「何を重視するか(冷却性・潤滑性・環境対応など)」によってより良い選択肢が異なります。
現場の目的・素材・機械条件に合わせて、ベストな切削油を選びましょう。

切削油の選び方のポイント

切削油は、加工に使う材料・条件・作業環境に応じて適切なものを選ぶことが大切です。適切に選定することで、工具寿命の延長、加工品質の安定、作業者の安全確保、コスト削減など多くのメリットがあります。

ここでは、選定時にチェックすべき3つの視点を解説します。

加工材料に合わせて選ぶ

切削油は、加工対象となる金属の性質に応じて適したタイプが異なります。金属の硬さや粘り、腐食のしやすさなどを考慮しながら選定することで、よりスムーズな加工が可能になります。

鉄・鋳鉄を加工する場合

  • 摩擦と発熱が比較的大きいため、潤滑性に優れた油性切削油が効果的です
  • もしくは、冷却性とのバランスが取れた乳化型水溶性切削油も良い選択です
  • 面粗度を向上させたい場合は、粘度や添加剤の配合にも注目しましょう

アルミ・非鉄金属を加工する場合

  • アルミは腐食しやすく酸化にも敏感なため、合成型・セミ合成型の水溶性切削油が適しています
  • 油性切削油を使うと、白錆や変色の原因になることもあるため注意が必要です
  • 洗浄性や腐敗しにくさも重要な判断材料です

ステンレス・難削材を加工する場合

  • 硬度が高く、熱がこもりやすい素材には、潤滑性が高い油性切削油が適しています
  • ただし、設備や環境によっては、冷却性の高い高性能な合成型水溶性を選ぶこともあります
  • 材料と工具の相性もチェックしておくと安心です

加工条件に応じて選ぶ

加工の方法やスピードによっても、切削油に求められる機能は大きく変わってきます。特に、切削速度・送り量・加工時間の長さなどに着目して選びましょう。

低速・重切削の場合

  • 強い摩擦と高い圧力がかかるため、油膜がしっかり形成される油性切削油が有利
  • ネジ切り・深穴加工などに適しています

高速・多軸加工の場合

  • 発熱量が多いため、冷却性を重視した水溶性切削油が安定
  • マシニングセンタやNC加工で特に効果的です

作業環境や安全性を考慮する

現代の加工現場では、作業効率だけでなく「作業者の健康や職場環境の快適さ」も重要視されています。そのため、切削油の選定にも人にやさしいという視点が欠かせません。

ミストの発生を抑えたい場合

  • 油性切削油は潤滑性に優れる反面、ミストが発生しやすく、吸い込みによる健康被害の懸念があります
  • 対策としては、ミストの少ない合成型水溶性切削油を使用することで、安全性と快適性が両立できます
  • 換気設備やミストコレクターとの相性も考慮しましょう

排水処理を簡略化したい場合

  • 油性タイプは産業廃棄物扱いとなり、専門業者による処理や費用負担が発生します
  • 一方、水溶性切削油は廃液処理が比較的しやすく、環境対応の観点でも有利です
  • 法令遵守やISO14001など環境マネジメント認証に対応した運用にも向いています

環境対応型の切削油の種類とは?

近年、製造業では「加工精度」や「コスト」だけでなく、環境や作業者への配慮が求められるようになってきました。
その中で注目を集めているのが、環境対応型の切削油です。

従来の鉱物油ベースの切削油に比べて、ミストの発生が少ない・廃棄しやすい・人体や自然への影響が少ないといった特長を持ち、さまざまな業界で導入が進んでいます。

従業員の健康や職場環境の改善はもちろん、企業の持続可能性(サステナビリティ)を高める観点からも、有力な選択肢となりつつあるのです。

SDGs・CSRの時代に求められる選択肢

近年では、環境負荷の低減が求められる中で、環境対応型の切削油が注目されています。

従来の鉱物油ベースに代わって、植物由来のオイルや生分解性に優れた成分を使った製品が増えており、企業の社会的責任(CSR)や環境認証の一環として採用が進んでいます。

主な特徴

  • バイオベースオイルを使用しており、生分解性が高く自然環境への負荷が少ない
  • 無添加タイプや低刺激性の製品が多く、作業者の肌荒れや吸入リスクを軽減
  • 使用中の臭いやミストが少なく、クリーンな作業空間を保ちやすい

導入が進む背景

  • SDGs(持続可能な開発目標)や脱炭素社会に貢献
  • 海外取引や環境基準が厳しい業種・顧客からの信頼獲得
  • 環境ISO・エコアクション21など、各種認証取得にも有利

このように、切削油の選定は「加工の効率化」だけでなく、「安全・環境・企業価値」まで左右します。

目的や現場の課題に合わせて、最適な種類を選ぶことがこれからの製造現場ではますます重要です。

まとめ

切削油は、金属加工において「冷却・潤滑・洗浄・防錆」という重要な役割を担う、まさに加工の縁の下の力持ちです。

しかし、その性能はすべて同じではなく、「油性・水溶性・合成型・セミ合成型・環境対応型」といった切削油の種類ごとに特徴や適性が異なります。

適切な切削油を選ぶことで、以下のような効果が得られます。

  • 工具寿命の延長
  • 加工精度の向上
  • 加工トラブルの軽減
  • 作業者の安全確保
  • 環境負荷や処理コストの削減

つまり、「ただ使う」のではなく、「正しく選ぶ」ことが、ものづくりの質と効率を大きく左右するのです。

本記事で紹介したように、切削油の選定では「加工材料」「加工条件」「作業環境」など、現場の状況に応じた判断が求められます。そして今後は、SDGsやCSRへの対応も含めた環境への配慮も選定基準のひとつとなっていくでしょう。

現場に合ったより良い切削油を見つけることで、コストと品質、どちらも妥協しない加工環境が実現できます。

ぜひ本記事の内容を参考に、切削油の見直し・選定に役立ててみてください。

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